やっさんの気持ち

いろいろやって行きます

Still love her

最終便の終わった夜のフェリー乗り場で 

今夜もひとりで僕はギター片手に路上で歌い始めた。

 

僕は今、軽音サークルでバンドをやっている。

が、しかし人前ではまだ演奏などはしたことがない。

そんな中今年秋の学園祭で コンテストに出ることになった。

今年の出演バンドが少なくて 運営直々にオファーが来たのだ。

 

バンドの中で一番声が大きいということで一応、ギターボーカルをやっている。

が、しかし、あまり人前に出るのは得意な方ではなかったので、

バンド練習とは別に度胸をつけるために路上で歌いを始めた。

 

とはいえ今日は 平日の夜である。人通りなどは殆ど無い。

むしろ  人通りの少ないからこの場所をチョイスしていた。

聴衆は誰もいない 度胸をつけるどころかただの発声練習だった。

 

バンドでの練習もあり毎日はできなかった。

しかし、何度かいつもの場所で歌っていると 

驚くことに立ち止まってくれる人がちらほらと、

「物好きもいるんだなぁ」と感心しているた。

 

しばらくして気づいたのだが

一人だけ毎回聞きに来てくれる女の子がいた。

その子は ぱっと見は高校生くらいだった。

 

お客さん(?)はその子だけという日も・・

話しかけた事こそ無かったが、歌う曲を最後まで聞いてくれるお客様の鏡のような女の子だった。

 

ついに明日が本番いうことで今日は最終調整のつもりで いつものように歌っていた。

足を止めてくれていた数人の人にペコリと長めのお辞儀をして顔を上げた。

目の前には  缶コーヒーを差し出す手が、

「がんばって」一言言い残して彼女は帰って行った。

 

路上で歌っていたおかげで コンテストでは緊張することなく

普段通りパフォーマンスすることが出来た。

そしてなんと賞をもらうこともできた。

 

もう路上で歌う理由はなくなった。

本番も終わり数日が過ぎた頃、僕はギター片手にまたあの場所に立っていた。

特になにか目標があったわけではなかったが、

また彼女が聴きに来てくれるような気がしていたからだ。

 

そんな時、以前より温めていたオリジナルの曲が完成した。

と、言っても どこかで聞き覚えのあるフレーズを繋ぎ合わせたようなものたが、

「まぁ初めてなので しょうがないでしょう」と妥協した。

 

あれから彼女は見ていない。

人もまばらなフェリー乗り場で僕は歌っていた。

自分の作った曲 オリジナルの自分だけの曲を。

それは、ちょっとしたアーティスト気分だった。

 

だけどそんな自己満足だけではない

彼女に聞いて欲しいという気持ちもあった。

 

今になると想う。

小さな目標だったけど,

叶える力をくれたのは彼女だと思う。

だからこそ、

だからこそ歌っている。

僕が間違いなく、この歌を本当に聞かせたかったのは彼女だから。


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